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なぜDTMerが相対音感を鍛えると作業が早くなるのか?

題に対する結論だけ知りたい人のためにまず要点を書きます。
・相対音感により、単音の音程がドレミでの何になるかわかる
・打ち込み作業の内訳で、「入力ミスを修正する」というのは意外と多い
・入力ミスが減り、修正が減る
・作業が早くなる 

以下本文。最近自分が試し、考えていることです。
さて、DTMを主体として音楽をやっている人には「音感」というものに苦手意識がある人が少なくはないのでしょうか?
なぜそう思うか。
私がそうだったからです。
聴いただけでメロディーのドレミがぱっとわかって演奏できたり書き起こせたりするっていうのは何か特殊な超能力のようで、遠いスキルだなーと感じたりしました。
とはいえ、曲を作って、作れている以上、音程に対する感覚がない、というのは基本的にありません。音感の素地はあります。超能力もあるかもしれません。奇跡も魔法も...。 

 では「相対音感」とはなんでしょう?
自分で楽器を弾いて演奏ミスがわかったり、カラオケで歌えたりするなら、相対音感がないってことはありません。ただ、「ラベル付け」がされていないだけです。
 ある単音を聴いたときに、それがドレミファソラシドのどれにあたるかを聞き分ける能力のことを「音感」と呼ぶことが多いと思います。
あとは楽譜を見てフレーズを頭で再生できたりとかですね。
ここの記事では、単音を聴いたときに
キーに対してドレミのどれにあたるかを判別する能力
を仮に「相対音感」と呼ぶことにします。
ドとミの音が、レとラの音がキーに対して同じ音だと感じる人は実はほとんどいないと思います。
キーに対してのドレミファソラシド(移動ド)は音として違いがあり、大抵の人はそれをしっかりと感じ取っています。
でも、「ラベル付け」がされていません。
「あの感じ」はわかる。でも「あの感じ」の名前がわからない、というのが「相対音感」が身につく前の状態です。

キーに対してドレミファソラシドがどんな音をしているか、というのは慣れて、覚えてしまえばそう難しい話ではありません。
センスというかは覚えゲーに近いです。歌ったり曲を作ってるなら誰にでもできます。しかし、それなりに意識的に鍛えていく必要があります。

さて、この相対音感を鍛えると色々と便利でメリットを語るだけで果てがないくらいですが、ここでは我々に非常に身近なメリットの一つとして「打ち込みが速くなる」ということを挙げます。

打ち込みの作業の手順について考えてみてください。
マウスポチポチの例だとこういう流れになると思います。

1.クリックしてノートを置く
2.ピッチがちょっと違うので位置を修正する
3.ノートの長さやベロシティを編集する

基本的にこれを繰り返すと思います。
とくに、「とりあえずノートを置いたがイメージした高さと違う」といった場合に2.が結構挟まれると思います。
この2.の工程は頻繁に発生しますが、実は結構な手間です。
2.の代わりに「0.ノートを置く音程を探す」をよくやる人もいるかもしれません。
相対音感を鍛えると、音を置く前から、どこにマウスを持っていけばいいかわかり、ノートを置く位置の微調整の作業が大幅に減ります。
これはリアルタイム入力の場合も同様で、鍵盤のどこを押すとどのピッチになるかを理解できるので、入力ミスが大幅に減り、修正の手間が大きく減ります。
結果として打ち込みのスピードが上がります。スピードは上がりますし、引き換えにクオリティが下がることはありません。むしろクオリティを上げるうえでも相対音感は力になるでしょう。 

次に、「相対音感を鍛える方法」について触れます。
この記事は「なぜ相対音感が便利か?」がメインですが、ここで言っている「相対音感」の定義が少々限定的なため、その説明のためには鍛え方についても少し言及する必要があります。 

ある程度色々な方法で鍛えることができますが、重要なのは
「音のドレミを確認する」ことです。
音は音です。ドレミファソラシドは「ラベル」です。
ドレミファソラシドは音そのものではなく、あくまでもそれに対応した「ラベル」であって「言葉」です。これは単に音楽を聴くだけでは習得できず、「どの音にどのラベルが対応しているのか」を認識し、確認し、覚える必要があります。つまり対応の関係性を覚えればいいのです。

 聴いて鍛える方法としては、次のYoutube再生リストなど再生してみるのがよいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=EXZPuc8wkM4&list=PLH4avq82yppN5XTly9RmIBN6f9sFwk-Pu&index=74

こちらの再生リストでは、様々な曲のメロディーが移動ドで歌い上げられている動画が多数含まれています。
こういったものを垂れ流して聞いているだけでも少しずつ相対音感は鍛えられます。一緒に歌ったりしてみるのも効果的ですね。

また、普段のDTMでも、今打ち込んでいるフレーズが"キーに対してのドレミでいうと何か、ということを確認するようにしてみると少しずつ身についていきます。
知ってる曲のメロディを楽器でも、iPadのガレバンのシンセとかで鳴らしたりしていくのでもいいでしょう。

 すぐに変わるものでもないですが、数か月くらいで、自分の相対音感が大きく変わることが実感できると思います。打ち込みの入力ミスも減り、作業が少し快適になり、楽曲の分析も少し楽になります。
あと、こういうトレーニングはわりと気楽にできて楽しいのもいいですね。

何かの参考にでもなれば幸いです。